糖尿病とは

(1) 糖尿病とは

糖尿病は、「インスリンの作用が十分でないためにブドウ糖が有効に使われず血糖値が普段より高くなる状態」と定義されますが、それは、インスリンの作用不足が、その根本の原因となります。それには、インスリンの分泌が少なくなるタイプと、インスリンが効きにくくなって作用が低下するタイプがあります。多くの糖尿病の方では、その両方の異常が認められ、血糖値の増加が、全身にいろいろな影響を与えるため継続的な治療が必要なります。

(2) インスリンとは

私たちは食物から栄養を摂取して生きています。体のエネルギー源となるものに炭水化物、脂質、蛋白質があり、三大栄養素と呼ばれます。三大栄養素の中で多くの人は、炭水化物を最も摂取しています。ごはん、パン、麺類などに炭水化物は多く含まれていますが、これらの食品を摂取すると消化によっブドウ糖となり、小腸から吸収され血液に入っていきます。すると血液中のブドウ糖量(血糖値)が高くなります。 

健康な人の場合、食事をして血糖値が上がりやすい状況でも、血糖値は適度な範囲に調節されています。これは、血糖値が上がった事を、いわばセンサー付きインスリン分泌装置である膵ランゲルハンス島β細胞が感知しインスリンを血液中に分泌するからです。インスリンには体内で最も強力に血糖値を下げる働きがあり、ブドウ糖を筋肉、脂肪、肝臓に取り込ませる事により、血糖値が下がるように作用します。一方、血糖値が下がってくるとインスリンの分泌も減少し、ブドウ糖が筋肉や脂肪に必要以上に取り込まれることはありません。これらの作用をによって、血糖値は空腹時でも食後でもちょうどよい範囲である、70〜140mg/dlに保たれています。

(3) 糖尿病の分類

(A)  1型糖尿病

1型糖尿病では、膵臓のランゲルハンス島に炎症が起こり、インスリンを作る膵ランゲルハンス島β細胞が破壊されます。その結果、インスリンが絶対的に不足し、血糖値が上昇します。1型糖尿病の原因ははっきりとは分かっていませんが、遺伝因子やウイルス感染などが関与していると考えられています。多くの場合、外部からのインスリン注射が必要な状態となります。

(B)  2型糖尿病

2型糖尿病では、インスリンによる血糖降下作用が低下し、また膵ランゲルハンス島β細胞からのインスリン分泌が不十分な状態です。これらの両方の異常により血糖値が上昇します。2型糖尿病の原因は明確ではありませんが、遺伝要素と生活習慣、外部要因が関与して発症すると考えられています。2型糖尿病は1型糖尿病よりも緩やかに進行することが多い病気です。

(C)  その他特定の機序疾患による糖尿病

特定の病気、状態、薬物に関連して発生する糖尿病です。多くは膵臓の病気や内分泌系の異常などが原因となります。例えば、慢性膵炎、急性膵炎や、膵臓の手術による損傷によって、膵臓が正常に機能せず、インスリンの分泌も不十分になるため、血糖値が上昇しますまた、内分泌系の異常も特定の機序疾患に関連する要因です。例えば、クッシング症候群と呼ばれる副腎皮質ホルモンの過剰分泌や治療のため副腎皮質ホルモン剤の内服によってホルモンのバランスが乱れ、インスリン作用が低下し、血糖値が上昇する場合があります。

(D)  妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、妊娠中に一時的に高血糖(血糖値が通常よりも高くなる状態)が起こる糖尿病の一種です。妊娠糖尿病は、通常は妊娠後期に発症することが多いですが、妊娠中に定期的な血液検査で早期に発見することが重要です。未治療の場合、高血糖が続くことで母体と胎児の健康に影響を及ぼすリスクがあります。妊娠糖尿病の治療には、食事の見直しや適切な運動、必要に応じてインスリン注射によって、母体と胎児の健康を保つことが目標とされます。妊娠糖尿病は出産後に通常は改善する傾向がありますが、将来的に2型糖尿病を発症する可能性があり、定期的な検査や健康管理が重要となります。

(4) 糖尿病の症状と問題点

血糖値が上昇すると、のどが渇く、たくさん水分を飲む、たくさん尿が出るなどの症状がみられます。さらに、体重が減少したり、強い全身倦怠感を感じたりすることがありますので、このような症状や兆候がある場合には糖尿病を疑必要があります。多くの糖尿病で認められるインスリンの効きの低下と血糖値の上昇は、体の血管を傷つけ、さまざまな臓器障害そ合併を引き起こします。そのため、糖尿病と診断された場合には、その合併症を予防するために血糖値を適切に低下させ、治療を継続する必要があります。