甲状腺と妊娠

(1) 妊娠橋本病について

甲状腺自己抗体が陽性の場合、TSHが2.5µU/mlをこえる軽度の潜在性甲状腺機能低下症で、妊娠高血圧症候群や流早産のリスクが高くなります。しかし適切なホルモンの補充によってそのリスクを低下させられることが報告されています。橋本病(慢性甲状腺炎)のある方が、妊娠を希望される場合には、TSH2.5µU/ml以下を目標に、合成T4製剤(チラーヂンS®、レボチロキシン®)の内服を微調整します。妊娠中・後期は、TSH3.0µU/ml以下にコントロールする事が一般的です。合成T4製剤(チラーヂンS®、レボチロキシン®)を内服しながらの授乳は問題ありません。一方、橋本病(慢性甲状腺炎)のある方では、産後に約6割の方が無痛性甲状腺炎や甲状腺機能低下症を合併する事が報告されています。以上のように、妊娠前から出産後まで甲状腺の経過観察が必要となりますので、主治医と相談していただくことをお勧めいたします。