亜急性甲状腺炎

(1) 亜急性甲状腺炎とは

亜急性甲状腺炎は甲状腺内に炎症がおき、甲状腺組織が壊れ、甲状腺組織内に貯留されていた甲状腺ホルモンが血中に漏れ出て、血中の甲状腺ホルモンが増えて甲状腺中毒症となる病気です。感冒の後に続いて起こることがしばしばあり、ウイルス感染により生じる可能性があります。時間はかかるものの自然に炎症はおさまり、甲状腺中毒症も治癒します。

(2) 症状

症状は炎症による症状と甲状腺ホルモン高値(甲状腺中毒症)による症状があります。炎症により、発熱と痛みを伴う甲状腺の腫れがおきます。甲状腺ホルモンが過剰となり、全身倦怠感、動悸、多汗、手指の震え、下痢、軟便、月経異常などの症状がおきます。

(3) 治療法

高熱や首の痛みがひどい人では症状に応じて副腎皮質ホルモンや抗炎症薬の投与が必要となります。ステロイドにより一晩で痛みや発熱が改善しますが、薬を早く減らしたり中止すると、病気が再燃してしまうことがあるので、症状改善後は薬を徐々に減らし、中止します。甲状腺中毒症状が強いときは、βブロッカーなどを使用して症状を緩和します。

(4) 臨床経過

炎症は数か月で落ち着き、内服薬もその頃には不要になります。上昇した甲状腺ホルモンは徐々に低下し正常になりますが、甲状腺内の甲状腺ホルモン枯渇のため、その後に一時的に甲状腺ホルモン不足(甲状腺機能低下)状態になることがあります。この甲状腺機能低下は一過性のことが多いのですが永続性の甲状腺機能低下症となり、合成T4製剤(チラーヂンS®、レボチロキシン®)の服用が必要となる場合もあります。